コラム 交通事故 基礎知識1
交通事故事件では,様々な用語が登場します。
今回は,交通事故事件でよく出てくる用語について,説明します。
交通事故証明書
自動車安全運転センターが発行する交通事故の証明書です。交通事故の日時,場所,当事者の氏名,住所,車両の登録番号,自賠責保険の加入の有無,証明書番号などの情報が記載されます。
自賠責保険
正式には「自動車損害賠償責任保険」です。いわゆる強制保険で,法律上加入が義務づけられています。通常は車検の際に加入します。
自賠責保険に加入せず,または,有効期間が切れていたままで自動車を運転すると,免許停止の行政処分,懲役・罰金の刑事罰を受けることがあります。
保険金が支払われる対象となるのは,自動車の交通事故による人身損害についてです。自転車が加害者の交通事故や物損は対象となりません。
自賠責保険の支払基準は法令で定められています。自賠責保険の補償内容は,最低限の保障となっていますので,実際に,賠償の対象となる損害は,自賠責保険金の範囲に限定されるものではありません。
任意保険
法律上加入が強制されているわけではありませんが,事故に備えて加入しておくべき保険が任意保険です。保険の内容は,各保険会社によって異なります。
保険金が支払われる対象となるのは,自動車の事故による人身損害だけでなく,物損も含まれます。人身損害については,自賠責保険の支払限度を超える部分に任意保険金が支払われます(自賠責保険の上積み保険)。
加害者の保険会社が,示談交渉の際に,任意保険基準(任意基準,当社基準)といって,賠償金を提示してくる場合がありますが,その基準は,各保険会社の内規に過ぎないため,これによって,被害者の加害者に対する損害賠償請求権が限定されるものではありませんので,注意しましょう。
政府補償事業
ひき逃げ事故で加害者が不明な場合や自賠責保険に加入していない無保険事故,泥棒運転による事故など,被害者が自賠責保険を受け取ることができない場合に被害者を救済する制度です。
加害者が自賠責保険に加入していないからといって,諦めてはいけません。
加害者請求
自賠法15条に基づく自賠責保険金の請求です。
加害者が被害者に損害賠償金を支払った後に,加害者が自賠責保険会社に対して保険金を請求できる制度です。
被害者請求
自賠法16条1項に基づく自賠責保険(損害賠償額)の請求です。
加害者が被害者に賠償を行わないなどの場合に,被害者保護のために,被害者が直接自賠責保険会社に対して損害賠償額の支払を請求できる制度です。
異議申立て
自賠責保険の支払に関して,無責事故に当たるかの判断(加害者に責任がない),重大な過失による減額に当たるかの判断(被害者に重大な過失がある),損害額の認定,後遺障害等級の認定(該当・非該当,等級)に不服がある場合に,異議申立てを行って,再審査を求める制度です。
被害者が自賠責保険の支払や後遺障害認定に関して納得がいかない場合には,異議申立てを行うことができます。
一括払制度
加害者が任意保険に加入している場合に,加害者の加入する任意保険会社が自賠責保険分も含めて被害者に賠償金を支払い,後日,任意保険会社が自賠責保険から自賠責保険金の支払を受ける制度です。
被害者は,自賠責保険の被害者請求をすることなく,加害者の任意保険会社から自賠責保険分も含めて賠償金の支払を受けることができます。
一括払制度は,実務では,通常利用されている制度です。
なお,加害者の任意保険会社との示談交渉が速やかに進まない場合や当面の生活費等を確保する必要がある場合には,一括払を解除することもでき,被害者は,被害者請求で自賠責保険金を請求することもできます。
本コラムは平成28年11月1日に執筆されたものです。記載内容につきましてはその時点の情報をもとに作成されております。また、内容に関しましては、万全を期しておりますが、内容全てを保証するものではありませんのでご了承ください。