離婚後の手続2
はじめに
離婚届を提出した後も,多くの手続が必要となります。
今回は,離婚後に必要な手続の中で,住民票,印鑑登録,健康保険,年金などの解説を行います。
なお,離婚の成立日と離婚届の提出についての解説は,当事務所コラムの「離婚後の手続1」(https://www.f-central.org/rikon/rikon-001/)に記載しておりますので,併せてご参照ください。
住民票の異動について
引越を行う場合
離婚によって,住所を変更する場合には,住民票の住所変更を行う必要があります。現在居住している市区町村外に出る場合には,住民異動(転出)届を提出し,引っ越し先の市区町村において,住民異動(転入)届を提出する必要があります。
また,同じ市区町村で住所を変更する場合には,住民異動(転居)届を提出します。それぞれの手続で具体的に必要なものは,福岡市の場合,以下のとおりです。
住民異動(転出)届(あらかじめ提出)
- 住民異動(転出)届書
- 窓口で届を提出する人の本人確認書類(運転免許証,パスポート,健康保険証など)
- 委任状(届出人が代理人の場合)
住民異動(転入)届(新しい住所に住み始めた日から14日以内に提出)
- 住民異動(転入)届書
- 前住所の市町村で発行した転出証明書
- 転入する人全員の,マイナンバー「通知カード」
- 窓口で届を提出する人の本人確認書類(運転免許証,パスポート,健康保険証など)
- 委任状(届出人が代理人の場合)
住民異動(転居)届(新しい住所に住み始めた日から14日以内に提出)
- 住民異動(転居)届書
- 転居する人全員のマイナンバー「通知カード」
- 窓口で届を提出する人の本人確認書類(運転免許証,パスポート,健康保険証など)
- 委任状(届出人が代理人の場合)
世帯変更届
離婚前に夫婦が同一世帯の住民票に属していたものの,離婚により世帯主が転居して住民票上の住所を変更する場合には,住民異動(世帯変更)届の提出が必要となる場合があります(妻と子供が住民票上の住所の変更をしない場合など)。世帯主が転出することにより世帯に属する人が1人になる場合には,残った人が世帯主となるため届出の必要はありません。
また,代理人による届出の場合には,委任状が必要となります。
なお,変更が生じた日から14日以内に提出するように定められています。
印鑑登録の届出
印鑑登録は,住民票のある市区町村において行われるものですので,市町村外に引っ越した場合には、引越先の市町村で印鑑登録も改めて行う必要があります。住民票のある市町村で登録がなされているため,同一市町村内で転居する場合には,届出は必要ありません。
印鑑登録に必要なもの(福岡市の場合)
- 印鑑登録申請書
- 登録しようとする印鑑
- 本人確認書類(運転免許証,パスポートなど)
- 委任状(代理人による申請の場合に必要です。なお,委任事項と代理人を指定し,登録する本人が署名および登録する印鑑を押したものです。)
健康保険
離婚に伴って氏名変更,住所変更,世帯変更,扶養変更等がある場合は,健康保険の手続が必要になります。なお,離婚前の別居時に手続を行う場合もあります。
(1)離婚前,国民健康保険に加入していた場合
① 離婚後,健康保険(社会保険)に加入する場合
離婚前に国民健康保険に加入していて,離婚後に社会保険適用の会社に就職する等して自分の会社の健康保険(社会保険)に加入する場合は,勤務先を通じて健康保険(社会保険)に加入する手続を行うことになります。
そして,従前加入していた国民健康保険の脱退手続きは自身で行います。この場合,印鑑と国民健康保険の保険証,会社で加入した健康保険の保険証等を持って市区町村役場に行き,国民健康保険を脱退する手続を行うことになります。
② 離婚後,国民健康保険に加入する場合
離婚前に自身を世帯主とする国民健康保険に加入していた場合は,自身の関係では特に手続は必要ありません。
離婚前に相手方を世帯主とする国民健康保険に加入していて,離婚後も国民健康保険に加入する場合は,居住地の市区町村役場で世帯変更等の手続を行うことになります。
また,転居先が別の市区町村役場の場合は転居先の市区町村役場で改めて加入手続を行うことになります。
(2) 離婚前に健康保険に加入していた場合
① 離婚後,健康保険(社会保険)に加入する場合
離婚前は相手方の健康保険の扶養に入っていた場合で,離婚後に社会保険適用の会社に就職する等して自分の勤務先の健康保険(社会保険)に加入する場合は,勤務先を通じて健康保険(社会保険)に加入の手続を行うことになります。
この場合,相手方の健康保険の資格喪失証明書が必要となる場合があります。これは,従前加入していた健康保険の資格の喪失を証明するもので,相手方から勤務先を通じて取得してもらうことになります。
② 離婚後,国民健康保険に加入する場合
離婚前は相手方の健康保険の扶養に入っていた場合で,離婚後に国民健康保険に加入する場合は,居住地の市区町村役場で国民健康保険に加入する手続をとることになります。
この場合,相手方の健康保険の資格喪失証明書が必要となります。
各事由が発生してから14日以内に手続を行う必要があります。
早期に手続を行わないと,無保険状態になってしまい,健康保険が適用されず,医療費の全額を支払わなければならない場合がありますので,注意が必要です。
また,相手方の協力が得られないと資格喪失証明書をスムーズに入手することができませんので,事前に協議調整を行うなど注意が必要です。
後期高齢者医療制度被保険者の方
市区町村外に転出するかによって手続が変わります。
福岡市の場合,福岡市から福岡県内の他市区町村へ転出する場合は,福岡市での手続きは必要ないため,新住所地の市区町村でのみ住所変更の手続きを行うこととなります。
福岡市から福岡県外へ転出する場合には,後期高齢者医療制度の被保険者証を福岡市に返還する必要があります。
また,福岡市に転入される場合や市内で転居される場合は,新住所地の区役所・出張所で住所変更の手続きが必要となります。
国民年金
国民年金についても,手続が必要となります。
国民年金は,第1号から第3号の被保険者という形に分けられますが,各被保険者も,状況により手続が必要になる場合があります。手続の場所は,住所地の区役所・出張所となります。具体的には,下記のとおり何号の被保険者であったかによって変わります。
第1号被保険者の方(自営業・農林漁業・アルバイト・学生・無職の方など)
離婚により氏名が変更になる場合や住所が変更になる場合には手続が必要です。
第2号被保険者の方(会社員,公務員などの厚生年金保険に加入している方)
離婚により氏名が変更になる場合や住所が変更になる場合には手続が必要です。
この場合,勤務先を通じて変更の手続きを行うことになりますので,各勤務先へお問い合わせください。
第3号被保険者の方(第2号被保険者に扶養されている配偶者)
離婚により,第2号被保険者の扶養から外れる場合は,基本的には第1号被保険者への変更手続きを行うことになります。ただし,国民年金ではなく,厚生年金に加入する場合には,各勤務先で手続を行うことになります。
なお,手続の期限は,「扶養から外れた日」または「離婚した日」のどちらか早い方の日から14日以内とされています。
最後に
離婚した場合,離婚届の提出だけではなく,いろいろな手続が必要となります。
実際に行わなければならない手続はかなり多くあり,必要な書類も多くあります。
離婚が成立してほっとしたという方は多いですが,そもそも行わなければならない手続を知らなかったり,ほっと一息ついている間に手続をするのを忘れてしまった,提出期限が迫ってきて焦ってしまったという話もよく耳にします。
手続はたくさんありますが,新しい生活への第一歩を踏み出すために必要なことですので,ひとつひとつ確認を行い,必要な手続を行って,しっかりと前に進んでいきましょう。
今回は,離婚に伴う住民票,印鑑登録,健康保険,年金などの解説を行いました。
なお,各手続きの詳細は,各勤務先,各市区町村役場によって異なっている場合がありますので,改めてご確認をお願いいたします。
他にも子ども関係の手続がありますので,改めて別のコラムで解説いたします。
本コラムは平成31年1月31日に執筆されたものです。記載内容につきましてはその時点の情報をもとに作成されております。また、内容に関しましては、万全を期しておりますが、内容全てを保証するものではありませんのでご了承ください。