子連れ離婚

親権の取り決め

日本の制度では、婚姻中の夫婦は共同で親権を行使しますが(共同親権)、離婚すると夫婦のうちいずれか一方が単独で親権を行使することになります(単独親権)。離婚する夫婦に未成年の子がいる場合,離婚届は、未成年の子どもの親権者を父又は母のどちらにするのかの記載がないと、受理されません。つまり、未成年の子どもがいる夫婦の離婚では、離婚の時点で,必ず親権の取り決めをしなければならないのです。

子供が2人以上いる場合は、それぞれの子供の親権者を決めなければなりません。ただし、協議離婚で親権者を定める場合でも、大人の都合だけではなく、子どもにとっての利益や福祉を考えて決定すべきです。

親権者については、弊所コラム「親権者の指定」も併せてご参照下さい。

親権者の取り決めでもめたら

親権者の取り決めが話し合いで成立しないときは、家庭裁判所へ親権者を定める調停、または審判を申し立てることになります。

裁判所が親権者を指定する場合、親権者は、経済力のみによって決められるものではありません。また、浮気などで離婚の原因を作った有責配偶者であっても、親権者に指定されることがあります。

家庭裁判所では、親権者の指定に際して、親権者となる者の事情として、監護(養育)の能力、養育の意思、子どもに対する愛情、心身の健康状態、経済状態、生活環境等が、子ども側の事情として、年齢、心身の健康状態、現状への適応状況、新しい養育環境への順応性、子の意思等を斟酌して判断がなされます。それぞれの事情については、必要に応じて家庭裁判所調査官により調査がなされ、裁判所による親権者の指定がなされます。

兄弟姉妹不分離の原則

兄弟姉妹がいる場合,家庭裁判所の審判や離婚訴訟の判決では,一般的に,兄弟姉妹は分離されずに親権者が指定されることが多いです。これは,兄弟姉妹は同一の親権者のもとで養育するのが望ましいと考えられているからです。

親権者と監護権者を分ける

親権者を決める場合,親権者が子どもの監護をする(養育する)のが通常ですが,父母の一方が親権者となって法定代理人としての義務の履行や財産管理などを行い、他方が監護権者となって子供を引き取り、世話をするというように親権者と監護権者を分ける場合があります。

この場合、進学では,願書提出,入学手続,奨学金申請などで親権者の同意が必要になる場合があったり,日常生活では,携帯電話の契約、クレジットカードの発行などで親権者の同意が必要となることがあります。

親権者の同意がスムーズに得られないと子どもの生活に支障を生じる場合があり,結局,子どもの利益や福祉に反することにもなりかねませんので,親権者と監護権者を分ける場合は、将来的にも父母が子どもの利益を図るために協力できるか,慎重な検討が必要です。

婚姻費用

離婚する前に別居状態になった場合などには,一方が他方に生活費を請求できる場合があります。この生活費を、婚姻費用といいます。この婚姻費用には、生活費以外にも、出産費、医療費、未成熟子の養育費、教育費、相当の交際費などのおよそ夫婦が生活していくために必要な費用が含まれると考えられています。

婚姻費用の額は、基本的には、夫婦双方の収入及び生活状況など個別の事情を元に決められますが、大まかな基準としては、裁判所が参考としている養育費・婚姻費用算定表が参考とされます。

ただし、算定表はあくまでも参考資料であり、具体的な金額は夫婦双方の収入及び生活状況の他,双方の個別的事情を総合的に考慮して決められることとなります。

なお、現在、日本弁護士連合会が養育費・婚姻費用の算定基準の改定の提言をしており、また,最高裁判所の司法研修所も,養育費・婚姻費用の算定基準を変更する研究を行っていますので、今後参考になる算定基準が変わる可能性があります。最新の動向についても、弁護士にお尋ねになるのがよいでしょう。

婚姻費用分担の調停

婚姻費用で夫婦の話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てることになります。

最高裁判所のサイトから「夫婦関係調停申立書」をダウンロード又は家庭裁判所に直接赴いて書式を入手し、必要事項を記入の上、相手の住居地を管轄する家庭裁判所、もしくは夫婦がともに希望する家庭裁判所に申請します。

この申し立てには、次のものが必要となります。

  • 夫婦の戸籍謄本1通
  • 申立人の収入関係の資料(源泉徴収票,給与明細,確定申告書等の写し)
  • 1,200円分の収入印紙
  • 連絡用の郵便切手(申し立てする家庭裁判所に金額を確認してください)

婚姻費用の分担の調停は、離婚調停と一緒に進めることも可能ですし,離婚するかどうか迷っている場合でも請求が可能な場合があります。

夫婦関係調整調停(離婚)の申立書(最高裁判所)
http://www.courts.go.jp/saiban/syosiki_kazityoutei/syosiki_01_23/index.html#blockskip_main

ただし、上記申立書では、個別的な事情を記載する欄はありません。裁判所に個別的な事項を理解してもらうためには、その点を文章にまとめて提出することなどが肝要となります。もちろん、ご自身でも書面を作成することはできますが、それぞれの事案において、重要な事実などは異なります。個別の事情に応じてわかりやすく整理することが重要ですので、個別事情を積極的に主張し,理解してもらうためには,弁護士の支援を受けることが望ましいでしょう。

調停中の生活費

調停や審判の申立て後,経済的に困窮していて,婚姻費用の調停成立または審判が出るまでに時間を要し,相手方の任意の支払も期待できないような場合には,「審判前の保全処分」の申立てをすることができます。この手続は,正式な審判が出るまでの暫定的な措置として婚姻費用の支払について裁判所の判断を求めるものです。裁判所が認めた場合は、相手に婚姻費用の仮払を命令してくれます。命令に従わない場合には、保全処分としての執行ができます。

ひとり親家庭を対象とした支援

平成28年度の厚生労働省の調査によると、全国でシングルマザー(母子家庭)は123.2万世帯います。平均年収は243万円で、就業率は81.8%となっています。ちなみに、シングルファザー(父子家庭)は18.7万世帯で、平均年収は420万円、就業率は85.4%です。

母子世帯と父子世帯の状況

母子世帯 父子世帯
1.世帯数[推計値] 123.2万世帯
(123.8万世帯)
18.7万世帯
(22.3万世帯)
2.ひとり親世帯になった理由 離婚 79.5%(80.8%)
死別 8.0%(7.5%)
離婚 75.6%(74.3%)
死別 19.0%(16.8%)
就業状況 81.8%(80.6%) 85.4%(91.3%)
就業者のうち正規の職員・従業員 44.2%(39.4%) 68.2%(67.2%)
就業者のうち自営業 3.4%(2.6%) 18.2%(15.6%)
就業者のうちパート・アルバイト等 43.8%(47.4%) 6.4%(8.0%)
4.平均年間収入[母又は父自身の収入] 243万円(223万円) 420万円(380万円)
5.平均年間就労収入[母又は父自身の就労収入] 200万円(181万円) 398万円(360万円)
6.平均年間収入[同居親族を含む世帯全員の収入] 348万円(291万円) 573万円(455万円)

厚生労働省:平成 28 年度 全国ひとり親世帯等調査結果の概要
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11923000-Kodomokateikyoku-Kateifukishika/0000188136.pdf

このように、母子家庭の収入は父子家庭に比べるとかなり低く、多くの母子家庭では支援が必要不可欠のものとなっています。

この支援を適切に受けることは、特に重要です。シングルマザー等のひとり親家庭を対象にした支援は、たくさんあります。しかし,積極的に自分から情報を取ろうとしないと、見過ごしてしまうものばかりなのが実情です。支援制度を確実に申し込んで、必要な支援をしっかりと受けるようにして頂きたいと思います。

そこで、ひとり親家庭が利用できる手当と助成金を紹介します。

児童手当

国から支給される、全ての家庭を対象とした支援策です。支給対象者は、0歳から15歳(中学校卒業の年度末まで)の子供たちです。

毎月の支給額は、次のとおりです(平成31年1月31日時点)。

  • 0歳~3歳未満:15,000円
  • 3歳~小学校修了前:10,000円(第1子・第2子)15,000円(第3子以降)
  • 中学生:10,000円

また、所得制限限度額という基準があり,これを超える世帯の子供に対しては、支給金額が5,000円とされています。

そして,この所得制限については、扶養親族の人数によって所得制限が異なりますので、注意が必要です。

詳細は、次のURLを参照してください。

内閣府:所得制限限度額表
https://www8.cao.go.jp/shoushi/jidouteate/pdf/gendogaku.pdf

そして,児童手当は、年間3回に分けて次のように支払われます。

  • 2〜5月分:6月に支払い
  • 6〜9月分:10月に支払い
  • 10月〜1月分:2月に支払い

児童扶養手当

母子家庭および父子家庭の、0歳から18歳に到達して最初の3月31日までの子供を対象としています。

毎月の支給額は、次のとおりです(平成31年1月31日時点)。

  • 子供が1人の場合:全部支給の場合は42,500円
  • 子供が2人目の加算額:全部支給の場合は10,040円
  • 子供が3人目以降の加算額:全部支給の場合は6,020円

これらは、年間3回に分けて次のように支払われます。ただし、2019年11月の支給(8〜10月分)から隔月支給に変更予定です。

  • 4〜7月分:8月に支払い
  • 8〜11月分:12月に支払い
  • 12月〜3月分:4月に支払い

児童扶養手当を受給するには、世帯の所得制限があります。扶養親族などが1人の場合、全部支給所得制限限度額は収入ベースで160万円になります。160万円を超えると、全部支給ではなく一部支給となります。

詳細は、次のURLを参照してください。

厚生労働省:「児童扶養手当」についての大切なお知らせ
https://www.mhlw.go.jp/content/000341592.pdf

その他の支援

その他にも、ひとり親家庭を支援する制度が種々存在しますので、市町村に問合せを行ってみるのがよいでしょう。

例えば、ひとり親家庭等医療費助成制度や市町村によっては住宅手当、自立支援制度、母子家庭自立支援給付金及び父子家庭自立支援給付金事業などがあります。

ただし、母子生活支援施設への入居等,支援が母子家庭に限られる制度もありますので、お住まいの市町村にお尋ねください。

さらに、次のような様々な貸付制度があります。

生活資金

母子又は父子家庭になって7年未満まで利用できます。生活を安定、継続するための生活補助資金です。

転宅資金

住宅の移転するのに必要な資金です。

就学支度資金

就学するために必要な被服などの購入に必要な資金です。

修学資金

高校や大学、専門学校などに就学させるための授業料、書籍代、交通費などの資金です。

本コラムは平成31年2月4日に執筆されたものです。記載内容につきましてはその時点の情報をもとに作成されております。また、内容に関しましては、万全を期しておりますが、内容全てを保証するものではありませんのでご了承ください。

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