令和元年12月の養育費・婚姻費用算定基準の改定

養育費・婚姻費用の標準算定方式・算定表について

離婚後子どもの生活費の分担を定める養育費と別居中の子どもと配偶者の生活費の分担を定める婚姻費用については、平成15年4月に、裁判官によって構成される東京・大阪養育費等研究会から、標準算定方式・算定表(以下「旧算定基準」といいます。)が提案され、実務では、この旧算定基準に基づき、養育費・婚姻費用が決められてきました。

しかし、旧算定基準に対しては、近時の社会情勢の変化もあり、金額が低すぎる批判が強く寄せられるようになり、また、旧算定基準の元となっている収入、生活費、学費、税金等の統計資料が古くなっているという指摘もされるようになっていました。

このような中、日弁連からは、平成28年11月に、「養育費・婚姻費用の新しい簡易な算定方式・算定表に関する提言」が公表されるなどし、算定基準の見直しを求める声が強まっていました。

日弁連HP

旧算定基準の提案から約15年が経過しましたが、裁判所においても、平成30年度の司法研究(養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究)において調査・検討が行われることになり、その中では、算定方法をより一層社会実態を反映したものにすることに加え、算定方法に改良すべき点がないかの検証・対応、成人年齢の引き下げによる影響(養育費の終期の関係等)の検討が行われました。

令和元年12月23日に、研究報告として、新しい養育費・婚姻費用の算定表など(以下「新算定基準」といいます。)が公表されました。

新算定基準に基づく養育費の金額は増額傾向

新算定基準は、以下のとおり裁判所のホームページで公表されています。

裁判所HP

旧算定基準と新算定基準を同じ家族構成・収入の条件で比較した場合、算定される養育費・婚姻費用の金額は、新算定基準の方が全般的に高くなる場合が多くなっています。なお、一部収入の条件によっては変化がない場合もあります。

例えば、以下のような家族構成・収入の条件の場合、養育費は、

子2人第1子及び第2子0~14歳
年収500万円(給与)
年収250万円(給与)

旧算定基準では、 月額4~6万円 でしたが、
新算定基準では、 月額6~8万円 となり、
月額2万円程度の増額となっています。

今後、養育費・婚姻費用を決める場合には、夫婦間の協議においても新算定基準を参考にすることが多くなると思われますし、家庭裁判所の調停、審判、裁判においても、新算定基準が用いられることになります。

過去に取り決めた養育費・婚姻費用は当然に新算定基準に従って決め直せるのか?

今後は、新算定基準に基づいて養育費・婚姻費用の取り決めがされることになりますが、過去に取り決めた養育費・婚姻費用は、どうなるのでしょうか?

今回、新算定基準が公表されましたので、過去の養育費・婚姻費用の取り決めにも、新算定基準が適用される結果、新算定基準に基づいて当然に金額が改定できるという考え方もあり得ますが、今回の研究報告では、そのような考え方はとらないことを明らかにしています。

一般的に、家庭裁判所の実務では、養育費・婚姻費用は、一度、調停・審判・裁判などで取り決めがされた場合は、原則として、その後の「事情変更」がない限り変更できないこととされています。

そこで、この実務の考え方に沿った場合、今回の新算定基準の公表が「事情変更」になるかが問題となりますが、今回の研究報告では、新算定基準の公表それ自体は、「事情変更」に該当しないという解釈基準を示しています。

  1. 研究の発表は、養育費等の額を変更すべき事情変更には該当しない。
  2. 客観的事情の変更があるなど、既に定めた養育費等を変更すべき場合の養育費等の算定にあたっては、本研究の提案した改定標準算定方式・算定表を用いることが期待される。

【出典:平成30年度 司法研究(養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究) 概要】

したがって、今回の研究報告(新算定基準)の公表によって、過去に取り決めた養育費・婚姻費用を当然に新算定基準に従って決め直せるわけではありません。

しかし、今回の研究報告では、子どもの年齢、収入、就学状況などが変化し、客観的事情の変更があるなど、既に定めた養育費等を変更すべき場合には、新算定基準を用いることが期待されるともされており、過去の養育費の取り決めから相当期間が経過している場合は、両親の収入や子どもの年齢(就学状況)など、養育費の算定の基礎となる客観的事情に変更がある場合もあることから、そのような場合は、「事情変更」があるといえ、改めて養育費の再算定を求めることができる可能性があり、新算定基準に基づき養育費を決め直せる場合も相当数あるのではないかと思われます。

今後の実際の対応

新算定基準の公表により、実務的にどのような影響が現れるかについては、令和2年1月以降の裁判所の運用を分析し、裁判例等の集積を待つ必要があります。

今回の研究報告では、新算定表の公表自体が、「事情変更」には当たらないとの考え方が示されていますが、上記のとおり、例えば、養育費を定めてから長期間が経過している事案は、双方の収入が大きく増減したり、子どもが成長して進学等により就学・生活状況が大きく変化している場合も多いですので、養育費を再算定すべき場合も多くあるのではないかと思われます。

新算定表は、旧算定表と同じ収入で比較した場合には、概ね養育費・婚姻費用の額が高くなる方向の改定がされていますが、上記のとおり、個別の事案毎に「事情の変更」の有無、その内容は異なりますので、再算定を求めれば、単純に養育費・婚姻費用が増額になるというものではないため、この点には注意が必要です。

とはいえ、過去に養育費の取り決めをしている場合は、過去に取り決めた経緯や現在の生活状況等を踏まえ、現在の養育費の金額が適正か、検証する方が望ましいといえます。

離婚後の養育費について、以下のようなことでお困りの方は、是非、一度、ご相談ください。

  • 養育費の相場がわからない
  • そもそも養育費の取り決めをしていない
  • 養育費の取り決めはあるが、払ってもらえていない
  • 養育費を払ってもらえないので、差押えを検討したい
  • 養育費の取り決めをしてから相当期間が経過していて、改めて決め直したい

成年年齢の引き下げ関係

ところで、令和4年4月に、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられることが予定されていることを踏まえ、今回の研究報告では、成年者と未成年者を区分する年齢が変わることによる養育費・婚姻費用の算定等における影響についても研究報告がされています。

この問題は、今後養育費・婚姻費用を取り決める場合だけでなく、過去に取り決めた内容にも影響する可能性があるため、研究報告の中では、以下のような解釈基準が示されました。

  1. 改正法成立又は施行前に養育費の終期として、「成年」に達する日までなどと定められた協議書、家事調停調書及び和解調書等における「成年」の意義は、基本的に20歳と解するのが相当である。
  2. 改正法の成立又は施行自体は、すでに合意や裁判により満20歳に達する日までなどと定められた養育費の支払義務の終期を18歳に変更すべき事由にはならない。
  3. 養育費の支払い義務の終期は、未成熟子を脱する時期であって、個別の事案に応じて判断される。未成熟子を脱する時期が特定して認定されない事案については、未成熟子を脱するのは20歳になる時点とされ、その時点が養育費の支払義務の終期と判断されることになると考える。
  4. 婚姻費用についても、子が18歳に達したことが直ちに婚姻費用の減額事由に該当するとは言えない。

【出典:平成30年度 司法研究(養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究) 概要】

過去に養育費を定めた際に、養育費の支払の終期として、具体的な年齢ではなく、「成年に達するまでの日」という定め方がされている場合がありますが、この場合の成年の解釈については、基本的に20歳と解するのが相当という解釈基準が示されています。

また、過去に20歳までの支払を定めている場合には、法改正を理由とし、支払終期を18歳までに変更すべき事由には当たらないという解釈基準も示されました。

さらに、法改正後の養育費の支払の終期の定め方としては、個別の事情にはよるものの、未成熟子を脱する時期が特定できない場合(例えば、将来の就職の時期の特定など自立する時期が特定できない場合)は、一般的には、成人年齢の18歳ではなく、20歳を終期と判断するといった解釈基準も示されています。

最後に

新算定基準では、近時の社会情勢も踏まえ、一人親家庭の子どもの保護・支援をこれまでよりも厚くする方向性が示されたといえるのではないかと思われます。ただし、今回の改定でもまだ子どもの保護・支援としては十分とは言えない声もありますし、各家庭により生活状況も異なりますので、新算定基準の算定表だけに着目するのではなく、個々の事案の個別の事情に着目し、子どもの将来のためを考えて養育費・婚姻費用の金額を定めていく必要があると考えます。

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